子宮がん検診で異常(要精密検査)と言われたら
子宮がん検診は一般的に子宮頸がんの検診のことをいいます。
「がん」検診ですが、異常があるかも(要精密検査)と言われた、イコール「がん」ではありません。
要精密検査となる対象は子宮頸がんだけでなく、その前の状態(前がん病変)の子宮頸部異形成も含みます。
がん検診で、がんの前の段階で発見しフォローすることが大事です。
また多くの子宮頸癌と子宮頸部異形成にはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関与しています。
・子宮頸がんとヒトパピローマウイルス(HPV)の関係について
子宮頸がんの発症にはHPVの感染が関与していることがわかっています。このウイルスに感染すること自体は決して特別なことではなく、性交経験のある女性であれば70~80%が生涯に一度は感染するといわれています。ほとんどの場合は一過性の感染で自身の免疫によってウイルスは自然に排除されます。ウイルスが排除されずに長期間感染が続くと(持続感染)、子宮頸部の細胞、組織に変化が生じます。この変化の多くは自然に治癒するのですが、治癒せずに進行すると「がん」として発病します。このいわゆる前がん病変の状態を「子宮頸部異形成」と呼びます。前述したように異形成になってもほとんどが、がんになるわけではなく多くは自然治癒しますが、一部のケースでは自然治癒されず進行して数年から十数年かけて、がん化していくと考えられています。
・子宮頸部異形成(子宮頸部上皮内腫瘍 CIN)について
異形成にも何段階かのステージがあり、組織診の結果によって軽度(CIN1)・中等度(CIN2)・高度(CIN3 上皮内癌を含む)の3段階に分けられています。高度になるほど将来的にがんになる可能性が高いと判断します。がんではない前がん病変であるCINの状態、すなわち上皮内に限局している場合を子宮頸部上皮内腫瘍といいます。
・子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)1~3はそれぞれどのような状態なのか
軽度異形成はCIN1といい、現在用いられているベセスダシステムの細胞診報告様式ではLSILに相当します。自然治癒する割合が高いため治療対象とならないことが多く、一般的には経過観察となります。しかし軽度異形成の約3~5%が中等度異形成を経て高度異形成や子宮頸がん(上皮内がん)に進行すると言われています。このため定期的な検診が必要です。
中等度異形成はCIN2、ベセスダシステムの細胞診報告様式ではHSILに相当します。このステージも一般的には経過観察となりますが10~15%が高度異形成や早期がんへ移行することが分かっています。より注意深い経過観察が必要ですし治療対象となる場合もあります。
高度異形成と上皮内がんをCIN3といいます。ベセスダシステムの細胞診報告様式ではHSILと表します。約15~20%が早期がんへ移行すると言われていますので高度異形成は一般的に治療対象となり円錐切除などの治療を行います。
・子宮頸がん検診の精密検査について
子宮頸がん検診で行う細胞診で異常が見つかったときには精密検査が必要です。これには子宮頸部をコルポスコープという顕微鏡を用いて病変を拡大して観察する検査と、それによって病変の強いと思われる部位を特定して組織を採取する狙い組織診が行われます。「狙い組織診」は若干の痛みと出血を伴う検査ですが、この検査結果で病変の有無や進行程度が確認できます。
なお、細胞診の結果でASC-USと判定された場合に限り精密検査が必要かどうかを決定するためのHPV検査(HPVの存在を調べる検査)を行うことがあります。